店主の中村悠太郎さん。店で扱うアナゴは重さ1キロにも及ぶ肉厚で上質なもの。「おいしいアナゴとおしゃべりで楽しんで下されば」=2024年5月22日、大阪市北区天神橋3丁目、中島隆撮影
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 大阪市の天神橋筋商店街、その3丁目の通りのちょこっと横に、アナゴ尽くしの料理を食べられる店がある。店主は「アナゴの概念をくつがえす自信があります」。

 店は「あなごと日本酒 なかむら」。店主の中村悠太郎さん(34)が2016年に開いた。テーブル席一つと、6人が座れるカウンターの店。お客さんの目の前で、中村さんが、大きくて肉厚なアナゴを調理していく。

 お造りは、ふわふわしたイメージのアナゴのコリコリとした食感が楽しめる。すき焼きは、甘辛い割り下にアナゴをくぐらせ、卵をからませる。

 中村さんは調理師専門学校で日本料理を学び、北新地の店に入った。ただ、新米なので掃除や雑用が回ってくる。3年たっても一番下。野菜などの下ごしらえをしてきたが、「これは調理ではなく作業だ」と感じるようになり、店を辞めた。

 その後、縁あってイタリア料理店で働くことになった。皿洗いをしていたが、調理も任されるように。お客さんの目の前でパスタなどをつくり、カウンター越しにお客さんに出す。顔をほころばせる様子を見て、料理への情熱がよみがえった。

 居酒屋に転職し、アナゴをさばき、すしや天ぷらにしていった。「アナゴはまだまだ未開の素材だ」と感じた。その可能性を自分で伝えたくて、26歳で店を構えた。「こんなの食べたことがない」というお客さんの言葉を聞きたくて、メニュー開発にも励む日々だ。

 出すのはコース料理のみ。平日は夜だけの営業で1人8千円。土曜はランチ営業もしていて4500円(いずれも税込み)。日曜定休。要予約。電話は06・6360・9696。(編集委員・中島隆)

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